240学パロ

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「なんだ。来てたなら連絡してくれれば良かったのに」
 そんな風な軽い調子で、神原選手に捕まった。昇降口前でたむろしていた私に、その言い方は少なからず語弊があるというか、有り体に言ってしまえば業腹ですらある。彼女が彼氏を待つ時のそれじゃないのだから。
 肩からは大きなメッセンジャーバッグが下がっていて、如何にも下校途中といった出で立ちだった。

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 今日はとても珍しいことにバスケ部の練習が無かったので、それが理由という訳でもないが私は沼地とだらだらと喋っていた。というか、私をだらだらと引き留めていたのは沼地の方だった気がする。そうでもなければ、オフの日の私は積読本の消化に忙しい筈だから。まあ、無理に理由を付けるのもわざとらしいが、放課後の教室に二人きり、というのはどこか特有の贅沢な時間の使い方をしている気もして嫌いじゃない。
 しかし、それは穏やかに事が済めば、の話で。

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りんご飴

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 八月の半ば。
 この時期になると、地元の町でもささやかながら夏祭りが催される。
「りんご飴、食べない?」
 突拍子もなく差し出された赤い玉を一本、私は彼女の手から受け取った。

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マインドセット

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 ささやかなリーグ制の練習試合の会場は、沼地の学校の体育館だった。
 馴染みの無い校舎の、馴染みの無い廊下。
 人の寄り付かない場所を選んだとは言っていたが、四校分のバスケットボール部が集合した中での呼び出しであった為、私の気持ちはどこか落ち着かない。
 しかし、どういうことか、呼び出した側の沼地の方にも同じような印象を抱かされた。

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