06
進展がないまま一週間が経過した。
「まもなく直江津高校でもプール開きですが、駿河先輩は水着のご用意はお済みですか?」
わざわざ昼休みに三年生の教室を訪ねて来る程、彼は私を慮ってくれているのか、はたまた面白がられているのだろうか。きっと後者なのだろうなあ、と私は今日も忍野扇くんの顔を見ながら思う。 …
クリームソーダの美味しいお店がある、と神原選手に誘われたので、学校の帰り道、私は彼女にのこのことついて行った。いくら直江津高校が進学校とはいえ、寄り道のひとつもしないようでは女子高生として不健全というものだ。
「だけど、どうしてクリームソーダなんだよ。今のご時世ならタピって帰るのが一般的じゃない?」
「それは昨日、別の友達と行ったから良いんだよ」
と、神原はこちらに目もくれず、つんとした表情で私の前を歩いている。
この田舎町でどこにそんな店があるのか、不勉強な私は知らなかったけれど、対する神原駿河選手の交友関係の広さは流石と言おうか。私は未だ飲んだことのない流行りの味を想像しながら、彼女の背を追った。
神原選手が足を止めたのは、煉瓦造りの年季の入った建物だった。カフェ、というより喫茶店という表現の方が似合う気がする。意味合いは同じなのだろうが、私達を出迎えた分厚い半透明な自動ドアを前にして、私はそんなことを思った。
扉の前に立つ。隙間からエアコンの冷気がふんわりと漂って来て、するとやっと喉を潤したい気分になってきた。