およそ三ヶ月振りに拝んだ沼地の面は、記憶の中のいけ好かない表情と大して変わりはなかった。
「どうせ、暇しているんじゃないかと思って」
なんて具合に、顔を近付けてこちらを覗き込みながらやけに嫌味ったらしく笑った顔(ひょっとしたらただの主観だったかもしれないけれど)すらもいつも通りで、しかし、現在の私が置かれた状況にそぐわない訳ではないのが、より癇に障る。 …
うちのナースはおさわり禁止2
04
沼地蠟花のことを何も知らない。
生まれも育ちも。将来の展望も。月に二度は私に会いに来て、安くはない酒と接客に金を落としていくけれど、その金はどこから回ってくるのかも。病院に人一倍苦手意識を持っている癖に、心理カウンセラーを志すようになった心境も――その病院嫌いの理由だって、全てを開示する義務などない筈なのに、沼地は私に話してくれた。しかし、それも私にとっては理解しかねるものだった訳で。
とどのつまり、私は彼女のことを何も分かっていないのだろう。
私だって、ただ黙って相手の隣に座っている訳ではない。実は喋り上手な彼女の言葉を――素直に受け取るには巧妙に混ぜられた皮肉をかわす必要があるし、毎度毒見でもするような心持ちにさせられる言葉の数々を――なるべく受け止めようとはしている。
それでも私は、彼女について何も知らないと言えよう。相手の話を聞けないことは、少なからず自分が不道徳を働いているような気持ちも芽生えるが、しかし。 …
うちのナースはおさわり禁止2
03
沼地蠟花は一人暮らしをしていた。
いや、戸籍謄本上は、今もしている。
ならばどうして過去形で表現したかと言えば、ミクロ的に考えた場合に、つまりはここ数日の生活を振り返った場合に、現在進行形で表すのはどうかと思ったのだ。 …
うちのナースはおさわり禁止2
うちのナースはおさわり禁止2
01
「神原選手って、医者なんだっけ?」
「違う。今は当ナース系いちゃキャバ場内指名ナンバー4のセクシー看護師だ。というか、私の名前は■■■だ。神原選手って誰ですか?」
「流石に自分を見失い過ぎじゃない?」 …