Reader
教室に並んだ席を埋めていたのは、私をカウントして三人だった。
自分の席でつらつらとうたた寝をしていた私と、書きかけの進路希望調査を机に広げている神原駿河と、もう一人。
あの後輩は、どうして三年生の教室を覘くのが好きなのだろう。まだ完全に覚醒していない寝ぼけた頭で考えたことは一番がそれで、次は神原のペンを握る手が止まっているな、ということだった。悪影響しかない。
「口唇欲求ってご存知ですか?」
「それは、あれだろう? 生まれて間もない頃、口を通して受ける愛情が満たされていないと、大人になってから煙草を好んだり、爪を噛む癖があったり、ガムをよく噛んだりする時がある……みたいな」 …
0