(in) directry

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「正直、もうどっちでも良いんじゃない?」

 と、やや冷たい視線と一緒に申し渡された沼地の言葉は、私にとってはどうにも喉に突っかかるものだった。

「どうせちゅーしちゃえば分からなくなるんだし」

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Vampirism

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「先輩は私の首に欲情はしないのか?」
 と、神原が尋ねてきたのは非常にタイミングが良く、満月の日の夜のことだった。否、敢えてその日に合わせて訊いてきたのかもしれない。僕の吸血鬼性、並びに吸血衝動が強くなる日を狙って。

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八十八夜の別れ霜

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「きっと私のことなんて忘れちゃうよ。忘れてしまって構わないんだ。精々もって一週間か、一ヶ月か――ほら、人の噂も七十五日って言うだろう? もっとも、『悪魔様』が七十五日も存在を覚えていられちゃあ、それは失敗の類なんだけれど――ワンシーズンも経てば、きみの考えも変わる筈さ。おっと、四十九日なんて言うなよ? それじゃあまるで私が死んだ人間みたいじゃないか」

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