Vampirism

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09

 据え膳食わぬはなんとやら。そんな恥ずかしい言い訳が頭に浮かぶ明け方だった。
 いつの間に僕の布団に潜り込んだのだろう。目が覚めると、神原駿河(着衣。珍しい)の寝顔が、すぐ隣にあった。
 ……うーむ。
 まるでこちらがパーソナルスペースを犯された体で語ったが、ここは神原邸の一室で、僕が寝ていた布団は神原家からお借りしたものだから、知らないうちに彼女が紛れ込んでいてもここは大きな心で見るべきだろうか。

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Vampirism

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08

「これはこれは阿良々木先輩、ご機嫌如何ですか? お一人で過ごされているお昼休み、そろそろお腹が一杯で眠くなっちゃう頃合いですか?」
 藪から棒に、僕の友達の少なさを嘆くような言い草を交えながら、そんな質問をくべてきそうな知人を、僕は一人しか思い付かない。
 弁当箱を片付け終えたばかりの僕の机に影を落としたのは、予想に違わず、忍野扇ちゃんだった。
 今日の彼女から、僕はどんな答えを期待されているのか。なんとなく察しがつかない訳じゃあなかったけれど、あえて自分から核心に触れるのは止しておこうとは思ったのだった。

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もしも、もしも、もしもの話

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04

「阿良々木先輩を抱かせて欲しい」
 と、自室の畳の上に三つ指付いて懇願する(それが出来るようになったのも、たった半月でまたも混沌と化していたこの空間を、僕が遮二無二清掃活動を行った末、なんとか床を掘り起こすことに成功した為であることを忘れないで欲しい)神原駿河を目の前にして、僕はどんな顔をしていたのだろうか。きっと締まりのない顔をしていたに違いない。

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手帳

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「阿良々木先輩は、随分と分厚い手帳を使うのだな」
 と、僕の手元を覗き込みながら、神原は言った。
 年の瀬が迫った時期の、大型書店の文房具コーナーでの指摘だった。

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rainy

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 レイニー・デヴィルの自我がどこにあるのかと言えば、常に私の自我と寄り添っているのだと思う。
 ならば、その自意識はもはや私自身だと言えるだろう。

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