「おやおや、駿河先輩。これからご退勤ですか?」
音もなく進む自転車で横付けしてきたのは、見知った顔の後輩の男の子で。全く、きみは嫌なタイミングで遭遇するなと、私は心中で苦笑を噛み潰す。
顔を見ずとも誰かと分かる――のは、この場合はあまり嬉しくないな。
現在時刻。日付が変わるまでおよそ一時間といったところか。
「はい、現在午後十一時ジャスト。月が綺麗な夜更けですが、女性がお一人で出歩くには相応しくないお時間です。仕事熱心もよろしいですが、夜更かしはお身体に障りますよ」
「そういうきみは何をしていたんだ? わざわざ私に告白する為に話しかけてきたのか? こんな夜更けに」
制服のままだし。補導とかされないのだろうか。……されないんだろうなあ。
されたとしても、この子の場合なんだかんだとおまわりさんまで煙に巻いてしまいそうだ。 …
月は空にメダルのように
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