泣かせた

Reader


 言葉を飲み込んだタイミングで、視界が歪んだ。不随意的に瞳から涙が落ちる。いや、ちょっと待て。ここで泣くのは先輩として格好悪過ぎる……という虚栄心も、弾みで一緒に流れてしまったと思われる。
「え、ちょっと待ってくださいよ。……はあ。僕の前で泣き出す駿河先輩とか、解釈違いなんですけど」

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微妙とでも言っておけ

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 最近よくつるんでるみたいだけど、きみと神原って仲良いのか?

「――といった感じに、もの言いたげな顔の阿良々木先輩に訊かれたんですけど、駿河先輩的にはどう思います?」
「……微妙?」
「ですよねー」

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hiccup

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「ひっく……ひっく……」
「……しゃっくりって百回したら死ぬってよく言いますよね」
「どうしてこのタイミングで言う」
「え? 隣でしゃっくりしてる人がいるんだし、思い出すには自然な流れじゃないですか?」

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死んでいくロマンチスト

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「……私は扇くんのことが好きなのだろうか」
 自転車に跨った背中に向けてこぼした呟きは、確かに私の声で出来ていた。
 突如、鼓膜に突き刺さるようなブレーキ音と共に、前を走っていたママチャリが百八十度ぐるりと半回転した。

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