言葉を飲み込んだタイミングで、視界が歪んだ。不随意的に瞳から涙が落ちる。いや、ちょっと待て。ここで泣くのは先輩として格好悪過ぎる……という虚栄心も、弾みで一緒に流れてしまったと思われる。
「え、ちょっと待ってくださいよ。……はあ。僕の前で泣き出す駿河先輩とか、解釈違いなんですけど」
「女子を泣かせておいての感想がそれか。人に勝手な解釈を押し付けるな。ちょっとは真摯に受け止めろ。その、本気で嫌そうな顔を、止めろ」
「わあ、ツッコミが沢山だ。駿河先輩でも焦ることってあるんですねえ」
「茶化すな」
「もーじゃあどうしろって言うんですか? ほら、ここで僕が真面目に慰め出したら、なんかかえって気まずいじゃないですか」
ねえ? と、小首を傾げる扇くん。不本意ながら、分からない心境ではなかったが、私は横隔膜からせり上がってくるしゃっくりを抑えるのに精一杯だったので、とてもじゃないがフォローには回れそうにない。
「そうだ。目にゴミが入ったことにでもして事なきを得ましょうよ。覗き込む振りをしながらのキスくらいならしてあげますから」
「どうして私が最近読んだ王道BL小説の内容を知っている」
「あー……でも他人の濡れている頬に口を付けるのは、ちょっと。僕、潔癖症なので」
「安心しろ。そもそも希望していないから」
言いながら、手の甲で瞼を擦る。強めに鼻をすすると、喉の辺りがツンと痛んだ。
「……そもそも泣かせたくて泣かせた訳じゃないですし」
と、背中を向けた先で扇くんがため息交じりにぼやいたが、別に、きみが真面目に人を慰められないとは思っていないよ。
泣かせた
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