「ひっく……ひっく……」
「……しゃっくりって百回したら死ぬってよく言いますよね」
「どうしてこのタイミングで言う」
「え? 隣でしゃっくりしてる人がいるんだし、思い出すには自然な流れじゃないですか?」
「それもそうだけど……ちょっと不謹慎だとは思わな、ひっく、ないのか?」
「思いませんでしたねー。面白いな、とは思いましたけど。直江津高校のスターであられる駿河先輩も、まるで赤ちゃんみたいなしゃっくりをするなんて、可愛らしいじゃないですか」
「人の不幸を可愛いとか言うな。ひっく。私がスター……だったかどうかはともかく、しゃっくりくらい普通にさせろ」
「ええ、どうぞお好きなだけ。咎める人もいないですからね」
「ひっく……いや、違うよ。止めたいんだって。先輩が苦労してるんだぞ。何か思うところはないのか? ひっく」
「しゃっくりぐらいで不幸自慢されても挨拶に困りますね。不肖な後輩として、何か策でも練れば良いんですか? そうだなあ……横隔膜に気合が足りないんじゃないですか?」
「なるほど。こうか」
「え。ギャグのつもりだったんですけど、伝わっちゃったんですか。これだから体育会系気質って嫌なんだよなあ……」
「あ、止まった気がする」
「横隔膜って随意筋でしたっけ?」
「ひっく」
「結局止まってないし。駿河先輩の適当さが露呈しただけでしたね」
「今のはなしだ」
「僕的にはありです」
「異性のしゃっくりに並々ならぬ興味を持つな」
「てい」
「っ!? ……断りなくエルボーを打ってくるな! 危ないだろ!」
「びっくりしたら止まるかな? って思いまして。いやいや、流石は駿河先輩。素晴らしい反射神経です。で、びっくりしました?」
「きみの遠慮のなさにびっくりしたよ」
「僕はまさかガードされるとは思ってなかったので、驚きを隠しきれませんが」
「きみが驚いてどうするんだ……ひっく」
hiccup
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