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 なんとなくのきまぐれで、僕は放課後、体育館に足を運んだ。その時間はバスケ部が練習をしていて、ともすれば神原駿河の練習風景が見られるかもしれない、と考えたのだ。男の後輩が汗を流している姿を見て何が楽しいのかと自分でも思うのだが――要するに、その時の僕は退屈していたのだ。小人閑居して不善をなす。そんな心境に近いかもしれない。
 なるべく人気のない通路を選びながら、二階席へと移る。人目をはばかるように、端の方の手すりにもたれ掛かると、タイミングよくコートの中を駆け回っている神原の姿が見えた。今日の練習メニューが基礎トレーニングだったら見ていてもつまらないので、すぐに踵を返すところだったが、幸か不幸か、僕の目に映ったのはあいつがダンクシュートを決めたシーンだった。
 そこまでタッパはない癖に(それでも僕より背が高いので癪だ)、あいつはああも簡単そうに跳んでみせるから、対戦相手にとっちゃ厄介なんだろうな――と、対象をしげしげと眺めていたら、ふと視線があった。すると、後輩の顔はぱあっと明るくなったが、こっちは笑顔を返す気にはなれなかった。なんだかなあ。
 つーか、この距離ですぐに僕だと分かるって、一体どんな視力してんだよ。
 と、ぼやいたのは勿論心の中でだけの筈なのだが、何が伝わってしまったのだろうか。コートの中から神原がウインクを飛ばしてきたので、僕はさっと右に避けた。もしも女子だったら、あるいはあいつのファンだったら黄色い声を上げてやったのかもしれないが、悲しいかな、僕はそのどちらでもなかったので、相手が飛ばした目配せは後ろの壁に当たって落ちたと思われる。

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「俺に言わせれば、阿良々木先輩の方が良く分からないがな。出会ったばかりの頃は、女の子しか抱けないって言っていたじゃないか。なのに、どうして俺と」
「さあな。なんでだろう。あんまり考えたくなかったから、考えたことなかったけどな」
「あ」
 ぞんざいな返事と共に、先輩の掌がするりと伸びてきて、脚の付け根をまさぐり始める。すると、自分の性器が下着の中で欲を吐き出したいとくすぶり始める。
「あ、阿良々木せんぱ……」
「黙ってろ。声聞くと萎えるから」
「う……」
 奥歯を食い締め、漏れそうな声を呼吸と共に逃がす。
「そうだよなあ……初めはお前の触るのって、結構きつかったんだよな」
 と、阿良々木先輩は平気で傷付くことを言ったが、きっと返事は求められていない。
 掌が先端を覆うように被せられ、滲んだ粘液を絡みつかせるように蓋をされた。そのまま焦らすような動作で、上下に扱かれる。だけど、相手の手の動きはどこか上の空で、良いところを的確に責めては貰えない。もしかすると、阿良々木先輩が理由を見つけるまでこのままなのかもしれない――なんて考えに思い至ると、否が応でも腰の奥が熱くなった。
 そのまま待って、待って、待つこと数分間。何度も行き来する手指の感触は、確実に俺を追い詰める。
 やがて、先輩はやっと言葉を見つけたのか、左手が意思を持ち始める。
「多分、あれだな。学校のスターのお前にマウント取れるのって、こうしている時くらいだからかな」
「っ……あ」
 吐き捨てるように呟かれた理由はきっと本心で、俺の胸を静かに抉った。なのに、射精の感覚は癖になりそうな程気持ち良いから恨めしく思う。

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