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 やっとの思いで全部入れた。いやもう、マジで千切れるかと思っちゃったぜ。
 互いの手指を割るようにして握った手が熱い。薄い膜越しに感じる体温と圧迫感は僕の快楽中枢を確実に刺激してくる――だけど、これで合っているのかどうか。それは僕も神原も知らない。童貞喪失と処女喪失のタイミングを同じにしている以上、不安はどうしたって拭いきれなかった。それは仕方がない。つい数分前まで、僕達はゴムの付け方すら分からなかったのだから。
「や、ったな、あららぎせんぱい……ついに、ついに私達は乗り越えたぞ……!」
 神原は神原で、なんだか場にそぐわない喜び方をしているし。そりゃあ確かに、相手の声には色気があったのだけれど、もっとこう、なんというか……。
 僕は思わず、神原の胸元に額を付ける形でへたり込んでしまった。いや、初めてに大層な夢を思い描いていた訳じゃあないけどさあ。
「ん。どうした阿良々木先輩。折角上手くいっていたのに、どうして元気を失くしてしまうんだ」
「お前がうるさいからだよ……」
 腰を退かせようとすると、萎縮した自分のペニスから避妊具が外れ落ちた。

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