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 大変珍しいことに、その日の沼地はノリの効いたワイシャツなんてものを着ていた。いやいや、ジャージ姿で来店し、ホールで悪目立ちしている日頃の彼女こそが異常なのであって、寧ろ今日の恰好の方が店に来る客としては相応しく、より多数派なファッションなんだけれど――どうしてだろう? 先入観から来るものなのか、違和感を禁じ得ない。それは本人の感じるところでもあるのか、
「まるで駄目だった」
 と、沼地は今日という日をそんな風に総括し、どこか腹立たし気にドリンクをあおった。グラスの尻から落ちた水滴が白い生地に模様を作る。  服装も珍しければ、会話の入り口に愚痴を選ぶのも珍しい。何が駄目なのかと言えば、フリーターを脱却する為に行っているという『カウンセリング活動』の成果が満足に上がらなかったのだという。
「スーツを着ているようなきちんとした相手、つまりは頼れる相手に聞いて貰いたい悩み、というのもあるのだろうけれど――私の目指すカウンセリングは、ある程度は親しみやすい格好じゃなきゃいけないんだろうな。それこそ、きみみたいに」
「最後の一言は付け加える必要があったか?」
「一部の疲れた人の心を癒すという意味では、そのナース服は大いに意味があると思うよ」
 ただ、人を癒していると言われておきながら怒るのも、釈然としなかった。我ながら単純だ。
 沼地は口の端を歪めている。己の不満を可視化する為の表情なのかと思いきや、どうやら欠伸を噛み殺しただけだったらしい。
「結局さ、人の心に響く言葉というのは『何を』言われたかではなく、『誰に』言われたかが大事なんだろうね」



「うちのナースはおさわり禁止」ノベルティより