せめてもの抵抗とばかりに、シーツの上で石の如く動かないでいると。
「ったく、しょうがねえな」
 阿良々木先輩が先に折れた。この人は何かと意地を張りたがる人だが、一度欲に負けるとあとは早い。こういう時、セオリー通りなら俺が口を使うことになるのだが、今日はどういう気まぐれなのか、阿良々木先輩はため息と共に、ゴムの入った袋を破こうとした――と、いうことは、そういうことなのだろう。
 急くような指遣いに、思わず息を飲んだ。滅多に使わないその袋を弄る仕草に感じたのは、期待と喪失感の両方。そして、俺は後者を飲み込むことが出来なかった。
「阿良々木先輩」
「ん?」
 潤滑油で濡れた指先が止まる。ともすれば、この懸念を声にすれば、それを使うこともなく先輩は部屋から出て行ってしまうのかもしれなかったが、それでも俺は、どうしても。
「そのままで良いから」
 ゴムなんて要らない。そのままあなたが欲しい。はっきりと口には出さなかったが、それでも先輩には伝わったらしく、相手は不愉快な気持ちを隠そうともせず、眉間に皺を寄せた。
「腹壊すぞ」
「構わない」
「僕が嫌なんだよ。病気とか」
「……傷付くなあ」
 俺の懇願を無視する形で、薄い膜を隔てたまま、先輩は腰を宛がってきた。この人を受け入れるのはとても久し振りな気がした。

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