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「まず大所帯で海に行くってのが非現実的なプランだったんだよな。あれだけ人数がいるんだ。一人くらい団体行動に向いていない奴がいたって、なんらおかしいことじゃあない」
「恐れながら差し出がましいことを言わせて頂くがな、阿良々木先輩。その論は一般論としては正しいのかもしれないけれど、少なくとも、団体行動からはぐれてしまった私達がして良い指摘ではないと思う」
 折り畳み式の自転車を漕ぐ僕の隣を並走していた神原後輩は、辛辣な意見を述べた。
 その指摘は確実に僕の心を抉ったが、まあ、イベント嫌いの僕が寝坊した所為で、戦場ヶ原に命じられて僕を迎えに来た神原までもが遅刻組の道中を辿ることになっているのだから、後輩が先輩を窘めるという不義を働かれようと、出来る説教はあまりない……負け惜しみとして流してくれと願うことだって、過ぎた要求だろう。炎天下の玄関先で、僕を忠犬のように待っていてくれた後輩に頭を下げに下げまくるフェーズはとうに過ぎたので、ここは黙って臨海の駅からビーチへ向かう道中を楽しむべきである。
 さて、グループチャット(何を隠そう、僕は今回の海行きで初めて使った)で、羽川から追い打ちで投げられていたありがたい位置情報によると、もう間もなく熱い砂浜が見えて来る筈なのだが。
「もう私は待ちきれないぞ、阿良々木先輩。ここで脱いでしまっても構わないだろうか」
「公道を半裸で走りたがるな。僕達の目的地が海辺から取調室に変わるのはごめんだぜ」
「中に着てきた水着がもうびしょびしょだ」
 と、走りながら神原は来ていたTシャツの裾をはためかせた。白いシャツの下に一体どんな色を隠していたのか興味がないでもなかったが、先駆けて隣を凝視しても何も見えなかった。

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