Reader


「なあ、阿良々木先輩。水着を買いに行きたいのだが、一緒に選びに行ってはくれないだろうか?」
「だからなんでお前はそうやって、僕と付き合ってる奴っぽいイベントを用意してくるんだよ」
「阿良々木先輩の審美眼を信頼してお願いしているのだ。早急に私に似合う水着が必要になったから」
 かように、くすぐったいことを言われてしまうと、安易に「友達と選びに行けば良いじゃねーか」なんて無粋なことは言えなくなってしまう僕である。
「来週までに必要なのだが、如何せん私は水着といえばスクール水着しか持っていない」
「へえ、意外……でもないか。お前らしいな」
「スクール水着も素晴らしい文化のひとつだとは思うが……折角のデートだからな。なるべくお洒落をしていきたい」
 と、心成しか電話の向こうの神原の声が弾んだ。
 で、デート? 神原さんが水着でデートだと?
「あれ? 阿良々木先輩、もしかして知らないのか? 戦場ヶ原先輩に誘われたから、てっきり知っているものかと」
「な、なんだよ。お前のデートの相手って、ひ……戦場ヶ原か」
「うん。なんでも、ナイトプールに行きたいんだとか」
「初耳なんですけど?」
 僕だって、あいつとプールサイドでデートしたことなんてないのに。
 だけど、日頃から己の裸体を見せたがっている神原の水着姿がどんなものなのかは気になったので(決してやましい気持ちはない)、うっかり了承の返事をしてしまった。

0